はじまりのものがたり

スサノオとアマテラスの誓約(うけい)のおはなし

海原の国を追放されたスサノオ。
それならばとアマテラスに申し上げて、お母さんのいる黄泉の国に行こうと
アマテラスが治める天の国(高天原)へ向かいました。
しかし、スサノオが行くと山や川が大荒れの嵐となり禍いを運んできたので
アマテラスは驚き
「私の弟が、天の国に来るのは私の国を奪おうと思っているのかもしれない。」
と思い、髪をふりほどき男の髪型にして、背中に1000本の矢をかつぎ、
腰に500本の矢を携えて、弓を持ちスサノオを待ち受けました。

アマテラスが
「お前はどういうわけで天の国に来たのか」
と問えばスサノオは
「私にやましい心はありません。海原の国を追放されたので、お母さんのいる黄泉に国にいく報告に来ました。」
と答えました。
それでも信じないアマテラスは、
「あなたの心が清いことをどう証明しますか」
と問いました。スサノオは
「神々に誓約(うけい)を立てて、女神を生んでみせましょう。」
と、答えました。

先にアマテラスは、スサノオがつけていた剣を取り、三つに折って、
神聖な井戸水で清めて、かんで吹き出すと
吐息の中から3柱の女神が生まれました。
次にスサノオは、アマテラスの勾玉を井戸水で清め、
神聖な井戸水で清めて、かんで吹き出すと
吐息の中から5柱の男神が生まれました。

アマテラスは
「この後から生まれた5柱の男神は、わたしが身につけていた勾玉から生まれた神です。
当然にわたしの子です。
先に生まれた3柱の女神は、すべてあなたが身につけていたものから生まれた神です。
すべてあなたの子です。」
スサノオは、得意げに言いました。
「わたしの心が清らかだったので、女神が生まれたのです。これで、わたしの勝ちですね。」
これで、やましい心がないことを証明したスサノオは、
天の国にしばらく住まうすることになったのです。

アマテラスの天岩戸ひらきのおはなし

スサノオは、賭けに勝った勢いにまかせて、
アマテラスが作っていた田の畔(あぜ)を踏みつぶし、
溝を埋めたりと次々と乱暴をはたらきました。
しかし、アマテラスは、
「すべて、わたしのかわいい弟がやったことです。」
と、スサノオをかばうようにおっしゃいました。
しかし、スサノオの乱暴は、止まることはありませんでした。

ある日、アマテラスは、神聖な機織場(はたおりば)で、
神様のお着物を織らせていると、
スサノオは、馬の皮をはいで、
その馬を機織場の天上に穴をあけて投げ込んだのです。
その騒ぎでそこにいた機織りの娘が機織りの横糸を通すための道具板が刺さり死んでしまったのです。
これには、アマテラスもショックを受けて、
天の岩戸の中に隠れてしまわれました。
太陽の神であるアマテラスが隠れてしまうと、
高天原(天の国)も、葦原の中つ国(地上の世界)も闇につつまれました。
永遠の夜になってしまったのです。
多くの神々が騒ぎだし、あらゆる禍いが起きました。

困った八百万の神々は高天原の安の河原に集まり、相談をしました。
別天つ神タカミムスビの子のオモヒカネ案を立てました。
まず、アマテラスに世が明けたと思わせるために常世の長鳴鳥(とこよのながなきどり)を集め鳴かせます。
それから、アメノウズメ(天宇受売命)がおもしろおかしく踊ります。
神々はそれを囃し立てて、ワイワイガヤガヤ大騒ぎ。
外の様子を不思議に思ったアマテラスは、岩戸の戸を少しだけ開けて外の様子を伺います。
アマテラスは尋ねます。
「私が、隠れて暗くなったというのに、なぜみんなは大声で笑っているの。」
そこでアメノウズメは、
「アマテラスさまよりも、尊い神さまがここにおられます。
 われわれはみな喜んで笑い、楽しんでおりました。」
と答えると、アメノコヤネとフトダマがアマテラスの前にさっと八咫鏡と八尺瓊勾玉を差し出しました。
そこからアマテラスの太陽の光が反射して、煌々と眩しい光りが差し込みました。
それを新しい尊い神と勘違いをしたアマテラスは、
さらに外が気になり少し戸から出て外をのぞきました。
そのときです
「さぁ!今だ!」
岩屋の戸のわきにかくれていた力の神タヂカラオがアマテラスの手をひっぱり
岩戸から外に連れ出すと、フトダマがすかさず岩屋にしめ縄を張り、
アマテラスは岩戸の中に帰ることができなくなりました。
そうして、高天原(天の国)と葦原の中つ国(地上の世界)には、日の光が戻り輝き始めました。

そもそもの事の発端となった、スサノオは
貢物を出させられ、ひげを切られ、手足の爪を抜きとられ、高天原を追放されました。

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